口と頭

2022年6月25日(土)

朝、立川の映画館で『ザ・ロストシティ』を観る。すごく面白かった。力技な脚本だと感じる瞬間もあったが、ギャグや爽快なシーンが自分にしっくりくると感じた。

劇中に好きなセリフが2つあった。どちらもチャニング・テイタム演じるモデルのアレンがサンドラ・ブロック演じる小説家のロレッタにかけた言葉。

一つは、ロレッタが自身にとって納得のいく小説が書けていないこと、でも小説のカバーモデルをしてくれるアレンの人気や彼との関係性のおかげでどうにか小説のシリーズを続けられていることに不満をこぼした際、「(自分の最近の作品を)駄作と言ってファンを貶めるな」とロレッタを諌めていた。

もう一つは、冒険を続けることでロレッタだけでなくアレンにも身の危険が及ぶことをふまえ、このまま冒険を続けるのはよそうと提案したロレッタに対して、アレンが「物語ならどう書く?」と尋ねたところ。作家としてのロレッタならこの冒険をどうしたいか聞き出すために問いの角度を少し変えて、より本音が言いやすいように変換した言い方が素敵だなと感じた。「そんな不満絶対言っちゃだめ」とか「本心ではこう思っているでしょ」という直接的に聞き出すのではなく、本来抱いているであろう相手の言葉を相手の領域に入り込まず、相手のペースで向き合わせるような言葉がけをしていた。


お昼ごはんはタイ料理屋さんで空芯菜炒めとグリーンカレーを食べた。店内ではBruno Mars「That’s What I Like」やJason Derulo「Want To Want Me」が流れていて懐かしく感じる。タイ料理屋さんなのにタイの楽曲は流れないんだなと無意識に思う。そう思ってすぐなんでタイ料理屋さんでタイの楽曲が流れていないことに違和感を感じたのだろうとも思う。別にどんな楽曲が流れていたっていい。利用客と店員さんがそれぞれで嫌な気持ちにならず、おいしく食事ができるような楽曲が流れていればそれで十分だと思う。自分の中に無意識でこうあるべきみたいなものが構築されていたことに驚いた。


立川と仙台の駅前は街の様子が似ているという話を誰かから聞いたことがある。でもそれを誰から聞いたのかさっぱり思い出せない。立川と聞いて思い出せるのは、宇多丸さんのラジオ番組。『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』か『アフター6ジャンクション』で、立川にあるシネマシティの話をされていた。立川の雰囲気はなんだかんだ好きなんですよみたいなことを宇多丸さんが話していたようにぼんやり記憶している。


めがねを買い替えたくて駅の中にあるめがね屋さんをいくつか回る。普段は接客対応を積極的にされないお店に立ち寄ることが多い。この日はこういうめがねがほしいという具体的なイメージがいくつかあったので、ファーストコンタクトで店員さんに声をかけていただいたのをきっかけに二つのお店で希望のめがねについて話をすることができた。イメージに合うフレームを提案してもらったり、レンズを含んだ値段について話が出来て勉強になる。候補の品番やメーカーをメモさせてもらってまた比較検討しますと伝えてお店をあとにできた。

店員さんの振る舞いのものまねでは、柳原可奈子さんのものまねがずっと大好き。最近はコットンのきょんさんの動画をSNSYouTubeで見る機会があって、その中でも最高のアパレル店員さんが好きでリール動画やYouTubeの動画を見る。シニカルは抑えめで陽気なのが特徴だと感じる。ミソジニーによっていないのも好みで既存の関係性の連帯から生まれるものを笑いのきっかけにしているように思う。特に好きなのが、もう一人の店員であるかなちゃんと友人の会話に耳を傾けながら、「いらっしゃいませ」「どうぞご覧くださいませ」でそれとなくカモフラージュしているところ。この動画以外にも「絶対に優勝させてくれるダンスの先生歌詞付けがち」がお気に入りでブックマークして時々見返している。


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夜、友達と電話する。本当は電話をしながらキッチンでおかずの作り置きをしようと思っていたが、キッチンの前を通ると複数のグループが飲み会をしていたのでタイミングを遅らせた。自分達より年齢が若い人たちはメッセージのやり取りをする上でLINEをどのような位置付けで使っているのだろうかという話をする。


お風呂に入る。今日は最初から最後まで一人だった。お風呂あがりに部屋にドライヤーを忘れたことに気づく。備え付けのドライヤーで髪を乾かす。備え付けのドライヤーは家電量販店でよく見かけるSALONIA。普段自分が使っているものよりも風が速いと感じる。お風呂から上がると、先程キッチンで見かけた方たちとすれ違う。キッチンでの飲み会が終わったよう。おやすみなさいと声をかける。

 

部屋の冷蔵庫から食材や調味料をかごに入れてキッチンへ。米を二合分炊く。その間にひじき煮、茄子の焼いたのに香味野菜をかけたもの、大根の葉と木綿豆腐厚揚げの煮浸し、ちくわの磯部炒め、ゆでたまごを作る。

キッチンには誰もいなかったが誰かが圧力鍋を使って煮込んでいる最中のようだった。キッチンに併設してあるソファスペースのテレビがつきっぱなしになっていたので消そうとすると、酔っ払った方がキッチンに入ってこられた。初めて見かけた方だったのであいさつをして、少し話す。手元にはゲータレードのような、ドクターペッパーのようなものを持たれていた。飲み物の名前を聞いて、マウンテンデューだと教えてもらう。缶を持たれた手元が少し小刻みに震えていたので、ここに来るまでに結構飲まれたんだなと想像する。おかずを作りながら話をすると、今日はテキーラをショットで飲まれたこと、もともとあまりお酒が強くないことを教えてもらう。もしもしんどかったらお水を飲んでくださいと促す。再放送していた『17歳の帝国』を観ながら、マウンテンデューを飲まれていた。程なくして部屋に戻られた。名前をすぐ忘れてしまうので、携帯にその方のお名前やこの日のやりとりをメモする。


おかずづくりを続けていると、以前お昼に挨拶した方がキッチンに入ってこられる。先程ぐつぐつと沸いていた圧力鍋を仕込んでいたのはその方だと分かる。すごくスパイスと肉のいい匂いが漂っていたので、差し支えなければ何を煮込まれていたのか伺い、許可をとって鍋の中身を見せてもらう。中には牛肉のブロック肉とお茶パックのようなものが入っていた。そのお茶パックのようなものの中にさまざまなスパイスが入っているらしい。クミンとシナモン、カルダモンのような匂いがしたが、他にもいろいろな香りがして複雑だと感じた。

その方とその後も調理をお互いにしながら仕事の話や、シェアハウスに入居するまでの大学生の頃の話などをする。お互いに会話のリズムが合う気がして心地よかった。大学の選択について理由を尋ねられる。これには大まかに二つの理由がある。一つは学びたいことがあったこと、もう一つは高校までの友達と離れた環境で一度過ごしてみたかったことがある。この話をすると、ときどき後者の理由についてなぜ?と聞かれることがあって、私はよくなんとなくはぐらかしてしまう。後者は自分のセクシュアリティと切り離せない話題だと感じるから返す言葉が確立できていない。しかもここ数年はその足場がまたおぼつかないような気分になることがあって余計に難しい。今日はこの流れで言ってしまえと思って、自分の今の心持ちがゲイかノンバイナリーだと話す。なんかそんな感じがしましたという返事をされる。この公表をするとき、会話は口だけで進んでいて、頭の中はその公表の自分の仕方や自分の言葉選び、相手の表情、受け答えに留まってしまってラグができることがこれまでしばしばあった。今日は口と頭がずれなく進み続ける感覚があって、それがすごく新鮮で嬉しかった。その後のそれぞれの職場の話やシェアハウスに住まれてる方の話をして、その方が定期的にされている料理会に誘ってもらい、来月の会に参加することにした。


途中、誰かがキッチンに入ってくる。その方と圧力鍋を使われていた方はお知り合いだったようで、あいさつをされていた。私も軽く挨拶をする。レンジを使おうとレンジ扉を開けたときに何か想定していないことがあってようで、what the fuck...とひとりごちていた。原因がなにかは取り立てて聞かなかったが、自然と漏れるwhat the fuck…をドラマやSNSの動画以外で初めて聴いたので新鮮に感じる。


圧力鍋を使われていた方と解散して、おかずを冷蔵庫や冷凍庫に入れる。Podcastで友達と話したいと思っていることや企画をメモして寝る。