後味

2022年7月4日(月)

眠れず。寝床でホン・カウ『モンスーン』を観て時間を過ごす。4時半に風呂に入る。来週から在宅勤務が部分的に緩和され、オフィスに出勤する必要がある。昼ごはんはお店で食べてもいいけど、選択肢の一つとして弁当も作れるようにしておきたい。今日は予行演習として弁当を作ろうと共用のキッチンに寄る。時刻は5時すぎくらいだったと思う。私より先にキッチンで朝ごはんと弁当作りを並行して進めておられる方がおられた。初めてお見かけする方だった。調理でお忙しそうだったので簡単に挨拶する。

共用のキッチンにはIHクッキングヒーターや流しなどがまとまったキッチン台が4セットあり、オセロの初期配置のように2セットずつが向かい合わせになっている。調理中の方の対角線上のキッチン台に部屋から持ってきた食材や調味料を置いて、卵焼きときんぴらごぼうを作る。調理中、キッチン台の横に設置されている大きなダイニングテーブルに目をやると、誰かの長財布が置きっぱなしになっていることに気づく。ひょっとしたら対角線上で調理されている方のものかなと思ったが、ご自分の財布にしては気にかけている様子は全くない。その方がもろもろの調理や準備を終えた後も財布に目を向けることなく、大きなダイニングデーブルからは離れた小さな一人用のテーブルで朝ごはんをとり始めたので、念のため財布について確認する。やはりその方のものではないらしい。共用のキッチンがいくらシェアハウスの居住者だけが出入りする空間とはいえ、人目につくところに財布があるのは危ない。自分が管理人さんに渡すということを伝えて部屋に一度持って帰る。

財布の中に連絡先の分かるものがあったら連絡しようと思い、カード類を一応確認する。電話番号が記載されているカードは見つからなかった。代わりに一枚のカードの記載情報から財布の持ち主が自分の隣の部屋の人であることが判明する。それとカードを確認する際、財布の中にお札が一枚も入っていないことによせばいいのに気づいてしまう。もしかしたら自分が気づくよりも先に誰かが財布を発見し、お札だけ抜き取ったのではないかと不審に思う。と同時に、もしそうである場合はこの財布を一番最後に持っている私がお札を抜き取りかねない一番怪しい人じゃないかと焦る。

午前中、仕事の合間に管理人さんのおられるお部屋に一度伺うも不在。午後に立ち寄った際は部屋の電気がついていたので財布を託ける。財布の紛失については隣の部屋の方がすでに管理人さんに問い合わせていたらしく、財布について伝えるとなんのことかすぐに察していた。

仕事終わりに一度外に出て帰宅すると、部屋の扉に紙袋がかけられていた。中には隣の部屋の方からのお礼の手紙とお菓子が入っていた。手紙には温かい言葉のみ書かれており、財布からお金がなくなっていたとか、あんたが怪しいとかまでは書かれていなかった。自分のいらぬ心配だったと胸を撫で下ろす。わざわざお菓子を準備いただいたのでお礼を伝えなければと思うが、隣の部屋のドアをノックしてどうもどうもと挨拶するのは少し直接的すぎるように感じ気が引ける。かといって手紙を今度はこちらが書いたり、お菓子のお礼にお菓子を贈るのは、その方に恩義を感じなさいと押し付けているような、またわざわざ貸しを作っているようで奇妙だと思う。何か方法がないかと考え思い出したのは、シェアハウス入居者全体のグループLINE。

入居時に管理人さんから任意で参加できるシェアハウス全体のグループLINEがあります、と説明を受けた。そこでは全体でのイベント事や共有すべきことがある場合に連絡が流れるらしい。自分はグループLINE、特に大人数のグループLINEが苦手。もしもそのグループが浮かれた感じのLINEを飛ばし合う感じだとしたら居心地悪いなあと咄嗟に思った。管理人さんから玄関ロビーでQRコードがプリントされた掲示について説明を受けた際、私が携帯でQRコードを読み取るのかなと管理人さんが少し待ち構えた瞬間があったが、また時間のあるときにQRコードを読み取って参加しますとそれっぽい返事だけ伝えてそのままにした。本望ではないが、あのグループLINEに入って、隣の方にお礼のLINEだけを送れば、過剰なリターンにならず、いただいたお菓子への応答もできる。

 

2022年7月5日(火)

玄関ロビーに掲示されたグループLINEのQRコードを読み取ると、なぜか個人のLINEアカウントにつながる。掲示をよく読むとLINEグループを管理している個人の方が一度間に入り、承認後グループLINEへの案内しているらしい。その手間、いるんだろうかと思いながら、グループLINEの管理人さんに連絡、招待を待つ。ほどなくしてグループLINEの管理人さんにグループに招待してもらう。昨日いただいたお手紙からお名前は把握していたので、グループのメンバー一覧からその方を探す。いない。ひらがな、カタカナ、アルファベットで探しても見つからない。どんな漢字かは詳細には分からない。メンバー一覧からそれらしき人を探すも見つからない。グループLINEの中に隣の人はたぶんいなかった。誤算だった。結局お礼はできず、入りたくなかったグループLINEに入ってしまっただけだ。なんでだ。

したかったことはできず、したくなかったことが進んでしまった。落ち込んだので、気分を上げようと近所のセブンへ。ATMを操作していると、マルチコピー機を使用されている方がきょろきょろしている。直前にマルチコピー機を使った方がお釣りを忘れていかれたよう。自分がATMを操作し始めたときは、直前の方が操作されているのを見かけていたので、なんとなく直前の方の見た目はわかる。それに退店してほとんど時間が経っていなかったのでそれほどお店から離れたところにはいないだろうと推測する。その方からお釣りを預かってセブンの外に出てあたりを歩いて見回す。少し日が落ちていたのもあって、それらしき人は見つけられなかった。マルチコピー機を使用されている方に事情を伝えて、お詫びし、レジの方にお釣りのお金を渡す。お店の外を見回して戻ってくるまでに少し時間がかかったので、ATMの前に戻ってくるとお釣りを見つけた方もマルチコピー機の使用が終わられたよう。挨拶をしてお店を後にされる。気を取り直してATMを操作しようとしたとき、先程お店を出られた方がコピーをした後に原稿カバーを持ち上げた動作を見かけなかったと思い、スキャナーを持ち上げる。保険証が残っている。なんでだ。保険証を取り出してお店を出て、駐車した車に乗りかけていたその方に保険証を渡す。ばつが悪い感じだった。

シャトレーゼ リッチチョコバッキー ホワイトミントショコラを買って帰る。連日の後味の悪さをさっぱりさせる。