家も年をとる

◼︎11月13日(金)

 仕事終わりレンタカーを借りて、実家に帰省する。帰り際に手土産として山珍の肉まんを買う。それと家から小山健さん『生理ちゃん』を持ち帰る。荷造りが遅くなって岡山を出発したのが23時、実家に到着したのは2時くらいだった。

 

◼︎11月14日(土)

 寝坊して8時に起床。1階の居間には両親がすでに起きていて、父はコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。朝ごはんに母がかに汁を作ってくれた。先日の旅行の際に聞いたK野さんちカニ話を思い出しながら、カニの身をほじくる。

 食パンに塗る用に持ち帰ったアオハタのあんずのジャムを母が見つけ、なんで分かった?と僕に問いかける。事情を聞くとその日の朝、母はスフレタイプのチーズケーキを作っていて、仕上げに表面に塗るためのあんずジャムがないことに終盤で気づいたらしい。いや〜なんかそうだろうな〜と思って、とはったりを決めるとそのはったりを踏まえた上でありがたがっていた。

 父が読み終えた日本海新聞を読む。鳥取駅のロータリーにある身体障害者用の乗降場に一般車両が止まっていることが頻発しているというニュースが取り上げられていた。利用している人にインタビューした際のコメントの中には「障害者の方がここで乗り降りしているのを見たことがない。言われたらすぐ移動します」というものがあった。見たことがないものをないものと措定してしまうことは、悲しいことだなあと思う。

 母から新聞に従兄弟のお子さんが誕生日お祝いのコーナー載ってるとのことで切り抜きを見せてもらう。従兄弟ご夫婦のコメントには「強くたくましい男になってね」とメッセージが添えられていた。その子が男の子として生きるか、女の子として生きるか、あるいはそういう枠組みをあてはめない選択をして生きるかはその人の自由だ。親が一方的に決めることじゃない。従兄弟ご夫婦のことは好きだけどもやもやした。

 時間を置いて母にそのことを伝えると、共感を示してくれた。どちらかといえば身内のことなので、そんなことちくちく指摘するなと言われるかと思ったので意外だった。続けて、母も授業参観の際に父兄と言われるともやもやする、今は保護者って言わないといけないと思う、と話していた。何かを話すときにそこに乗れない人やこぼれ落ちてしまう人がいないかを絶えず点検しないといけないよねという話になった。

 晩ごはんに、かぶと鮭の煮物と牛肉のしぐれ煮を作った。しぐれ煮は最後に吹屋で買った柚子胡椒を加えたら、味がしまって美味しくなった気がする。

 甥姪が遊びに来たので「はぁって言うゲーム」というボードゲームをする。共通の台詞をカードに書かれたシチュエーションで表現し、当てるゲーム。そのためシチュエーションのニュアンスを理解し、適切に表現することが必要になる。小学一年生の姪にはまだ難しいようで、書いてあることとは正反対の表現をしたり、お題を読み間違えたりしていた。みんなが当てられず苦戦したが、そのミスコミュニケーションも含めて楽しかった。スピーカーから流していたプレイリストからTWICEの「I CAN'T STOP ME」と「BETTER」が流れるとみんなが鼻歌で歌っていた。

 小山健さん『生理ちゃん』を見つけると、中学1年生と小学5年生の姪が「あ、生理ちゃんだ」と反応した。どうやら姉も同じく『生理ちゃん』を読んでいるようで、すでに姪二人はWebでいくつかの話を読んだことがあるようだった。漫画きっかけでも叔父が生理のことを知ろうとしている姿を示すことは遠因的になにか姪甥たちの考え方を豊かにしてくれたらいいなあと思う。

 

◼︎11月15日(日)

 この日は早起きして両親が起きて来る前に両親分のコーヒーを淹れられた。父が起きて来る。父は普段、インスタントコーヒーにブライトなどのミルクを加えてコーヒーを飲んでいる。僕が帰省したときはこの行程が変わり、コーヒーサーバーのコーヒーをカップに注ぎ、ブライトなどのミルクを加え、レンジで温めることになる。この日は一連の行為をしている最中の父に向かって僕が色々話しかけたので、コーヒーサーバーのコーヒーをカップに注いだあと、そこにインスタントコーヒーの粉を誤って加えてしまっていた。非日常の行為をイレギュラーな会話で乱してしまった。父も自身の行動がおかしかったようで笑っていた。

 朝、昨日晩ごはんの食材を買うついでに立ち寄ったツタヤで借りた『パラサイト』を父と観る。そういえばこの映画ではパク家が一緒に食事を取るシーンが描かれていないなと思う。代わりに、パク家がキャンプに出かけた日にキム家がリビングテーブルに所狭しと料理や食器を並べて団欒するシーンが描かれていて、その対照性みたいなものに気づいた。お昼ごはんの直前に一番凄惨なシーンを迎えたのでそこは30秒スキップで飛ばした。

 午後、祖母の月命日だったので母と墓参りに行く。お墓周りには落ち葉がたくさん落ちていたのでお墓の隅に置いてある掃除道具で落ち葉を掃く。

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 庭と離れの段差を繋ぐコンクリートのプレートが経年劣化により剥がれてしまっている。母とホームセンターに行ってコンクリートを買って、両親と一緒に修繕をする。僕や両親が年老いていくのと同じように家も年を取る。そういう瞬間が是枝監督の『歩いても歩いても』では印象的に描かれている。阿部寛さん演じる良多が老朽化する浴室に気づくシーンが特に好きだ。

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 夜、姉と姪甥と地元の温泉へ行く。サウナ室に入ると、僕が高校生のころにその温泉のサウナでお見かけするお客さんが既に入っておられた。会釈する。後から入ってきたお客さんたちと常連さんが「あの人最近見かけないですね」という話をされていた。サウナで知り合ったのか、もともと知り合いだった人たちがたまたまサウナで出くわしたのか分からないけど、サウナという場所で形作られるコミュニティでの会話が新鮮だった。そういえば、映画『パブリック 図書館の奇跡』でも、ホームレスの人たちがコミュニティで最近見かけない人のことを心配する場面があった。
 温泉上がりに甥と二人で大広間の休憩室で話をする。甥の爪がきれいだったのでどうやって手入れをしているかを尋ねると爪切りはさみとやすりを使っているらしい。甥の足の親指に埃が溜まって黒くなっていたので、これくさいよな〜と言うと笑っていた。

 温泉から戻ったあと、祖母の部屋でテレビを見ながら姪甥たちと「はぁって言うゲーム」をする。この日は母も加わり、6人でプレイした。途中テレビできつねの淡路さんが『初耳学』の番組企画のマッチングアプリでパートナーを見つけるものに出演されておられた。今回の帰省ではSwitchを持ち帰っていたので、かわりばんこでもじぴったんをする。ゲームが終わるごとにそのゲームで登場した言葉を振り返ってみんなで語彙を覚える。甥が「NAFTA(なふた)」を作っていたので、すごいな〜と褒めると、横から姉がまぐれまぐれと笑っていた。

 前日の土曜日、小学校では運動会があったようで、明日月曜日は代休らしい。一番上の中学生の姪を除いた3人が実家に泊まる。元自室にあるマットレスを下の祖母の部屋に持って下りて、祖母のベッドと並べて4人で寝る。消灯後、誰の隣で寝たいかとか、今おならしたのは誰かとか、祖母の布団と毛布は重たいといったくだらなくて愛おしい話を好き勝手おのおの話して寝る。

 

◼︎11月16日(月)

 3時半に起床。着替えて10kmくらい走る。地元では明るい時分に外を走るのは気がひけるので、こうして暗い時間帯に走るようにしている。相手はそれほど気にしていないのかもしれないが、明るい時間帯に車で通り過ぎる人たちの目がどうしても気になってしまう。

 7時頃、祖母の部屋に行くと、小学5年生の姪と小学1年生の姪が起きていた。起きてきた甥姪たちと一緒に朝ごはんを食べる。姉の家では朝はZIPを見るらしい。この日のニュースの一つに伊豆の動物園でホワイトタイガーが生まれたことが取り上げられていた。性別がまだ分からないため名前は決まっていないとの報道を受けて小学5年生の姪が「名前つけちゃいないな、性別関係ないだけ」と突っ込んでいた。すごくびっくりした。姉がそういう教育をしているというのはなんとなく知っていたが、こんなに自然にこういう言葉が姪から出てくることに、いや〜すごいな〜と感心してしまった。

 朝ごはんを食べ終えた頃に姉が実家を訪れる。近所を散歩する。山道には栗や椎の実が落ちていて、野いちごが自生していた。野いちごは保育園に迎えに来てくれた姉とよく帰り道に食べた思い出の味。姉もこの日の散歩でそんな話をしていた。今朝のZIPのニュースを見ていたときの姪のことを姉に話すと、姪は制服やユニフォームについても自分はズボンが履きたいと言っているらしい。すごく頼もしいと思う。

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 午前中、今回の帰省で撮った写真を現像する。HAKUSENに寄って友達に送る用のお菓子を買う。10月末に北海道の友達から野菜を送ってもらい、11月上旬にはブログ友達からお菓子を送ってもらった。気落ちしていた頃でその贈り物がすごく嬉しかった。ので、そのお礼。現像した写真を実家に置いて岡山に帰る。