ぼちぼち

 今日また仕事で言い出しづらかったことを話した。話された相手は、そのことが頭の片隅にはあったようで、少し苦い表情をされていた。相手に負担をかけることと、苦い表情をされることは想定していた。いくぶんかそれが和らぐように、こちらも少し事前に分量が減るように努めたのだけど、それでも苦さは残っていたように私は感じた。あの瞬間が本当に苦手でうまく割り切れない。

 頭で分かっていても言い間違えてしまうことがある。シミュレーションのことをシュミレーションと言ってしまう。言語学的にこれは音位転倒とか音位転換というらしい。古典で習った「新し(あらたし)」が今では「新しい(あたらしい)」になっていたり、おいしいものを食べたときの「舌鼓(したづつみ)を打つ」は元来は舌鼓(したつづみ)がもともとだったりと、音位転倒・音位転換したものを現在ではより多くの人が採用している。今回の自分の間違いは今の段階ではただの言い間違えに過ぎない。転換といえば響きがいいが体裁を整えた感じがどうにも気になるので、転倒の方が私にはしっくりくるなあを感じる。

 メールに自分の確固たる文体がない。そのときどきでやり取りをしている人の文体に影響を受けてしまう。今は転職エージェントの担当者の件名【ありがとうございます】【御礼】みたいなのをときどき業務でも使ってしまう。

 セブンで朝ごはんを買う。エッグマフィンとカフェラテ。お店を出るときにレジをされていた店員さんがもう一人の品出しをされている店員さんに「◯◯さん、ぼちぼち〜」と声をかけていた。シフト終わりの合図を知らせる、その人の定着した婉曲的な表現かな、と思う。

 天候は決して悪くなかったが、夕刻で道が混んでいたということもあってバスは予定のダイヤから40分遅れで来る。私は路線バスが苦手。加速と減速のタイミングが急なことが多く、その繰り返しでぐったりしてしまう。今日はリュックに荷物を多く入れていて、バスの中で立っていたので余計にくたびれてしまった。

 バスの中で『kemioの耳そうじクラブ』を聴く。「隠キャ」のアクセントに慣れない。たぶん多くの人に採用されているのは「感謝」と同じアクセントだと思うのだけど、自分は「段差」「便座」のアクセントで言っている。話してる内容がお互いにちょっと調子に乗っちゃったけどでもそれでもそれを知った上で私たち頑張ってきたよね、これからも頑張っていこうねという信頼関係が伺えてすごく元気を分けてもらえる内容だった。

kemio「逆に将来のこととかは25歳になって考えるようになった?」

大関「逆に分かんなくなっちゃってんの、今。なんか夢とか言われても、(え、夢…?)みたいな。ちっちゃい頃とか学生の頃はなんか夢があったのね、何歳にこういうことしてとか思ってたけど、今なんか(え、どうしよう…?)みたいな。何を目標にしようとかを逆に悩んじゃうかも」

kemio「アタシもそうだよ。アタシもそう」

大関「もちろんやりたいこととかはあるんだけれども、なんだろう、なんかさこれも最近思ったんだけどさ、やっぱさ、今までの経験値?経験値がうちらもそれなりに年も取ってきたから上がってるわけじゃん。で、今までの幼いころとか学生のころって、知らないことがいっぱいあったから、いろんなものがキラキラして見えたし、いろんなことが初めてで楽しく感じれたりとか、だからちょっと時間も遅く感じてたと思うのね、初めての経験がいっぱいで。でも今って、初めての経験がもうないじゃん、この年になると。初めての経験がそんな、いやまあ、あるんだけど。日々がいつも通りすぎて、たぶんあのいろんないいこともやってるんだろうけどそれももう今まで経験してきちゃってるから、なんかこう新鮮に感じられないみたいなのがあって、なんかなんだろうね、それがちょっと寂しいって思ったりもするんだけど、だから夢とかこの先とか考えたときに、え〜分かんない〜ってなっちゃう。やりたいことはあるんだけど、でももう分かんない先のこともうってなっちゃう」

kemio「え、分かんなくていいんだよ、絶対。たぶんみんな分かんないと思うよ。なんか25とか26って、たぶんすごい難しいというか、不思議なたぶん年齢だと私は勝手に紐解いてんの。なんかたぶんれいかちゃんがさっき話してくれたみたいな小さい頃これやりたいとか明確だったっていうのは、たぶん何も知らないから明確でいけたんだと思うの。でも大人になって、社会人になって、実際にお仕事を経験したりとか、人付き合いとか人間関係をこれ学んであれを見てっていうので、たぶん自分の気づかないうちに頭の中でなんだろうな、こうすごい残酷な言い方をするとなんかこうリミットとかかけちゃうんだと思うの。ああどうせとか、なんか、なんだろうな、どこまで自分が努力しても、もしかしたらここまでしかいけないんじゃないかとかがたぶん25、6くらいって考えてきちゃう年齢だと思うの。だからこそたぶんなんかこう、やりたいこととか、これを将来やってみたいっていうのを考えるけれど、それに対していやでもうーんっていうダウトをかけちゃうんだと思うの。っていうのをなんか最近私も思うよ。そこを立ち止まっちゃいけないんだけど、難しいのよこれが〜!」

(2021年10月23日配信 Spotify Podcast『kemioの耳そうじクラブ』)