ぴったりのドレス

 お昼休みは一度家に帰ってご飯を食べている。時間があまりないときやあまり料理をあれこれ考えたくないときは、納豆ごはんとみそ汁を準備することが多い。冷凍ごはんをレンジで解凍。その間にケトルでお湯を沸かす。大きなマグカップに絹どうふ一丁と冷凍のほうれん草と油揚げ、液体みそを加える。大学のときの友達と少し前にZoomで話したとき、みそ汁にエキストラバージンオリーブオイルを加えるとおいしいと教えてもらった。以来、みそ汁にオリーブオイルを加えるようにしている。これがとてもおいしい。ほうれん草からは出ない青みが加わるのと、油分が上乗せされるからかコクをより感じる。

 

 マッチングアプリを先月末から再開した。最後に利用したのは前のパートナーと付き合った頃なので、たぶん4、5年ぶり。継続的な利用こそ数年ぶりだが、この間に何度かアプリをインストールしたことがある。会員登録をして30分ほどアプリを操作する。ああ、このなんとなくしんどい感じ、相変わらず得意じゃないなあと思う。退会手続きをしてアプリをアンインストールする。これを年に1、2回やっていた。

 プロフィール文には自分がかつて書いていたような関心を寄せることに加えて、LGBTQ+はじめマイノリティの人たちの人権が尊重されるよう、自分自身や周囲の差別や偏見に向き合い、行動したいと考えている旨を書き添えた。カジュアルにやりとりしたい人からすれば、近寄りがたい人物だと想像されるだろうと思う。でも今こういう気持ちなのは確かだし、それでいいと思った。また婉曲的な手法でルッキズムやエイジズムにできるだけ自分からぶつからないように、相手からもなるべく投げかけられないように、自分の身を守ろうとしている。

 

 仕事でハイコンテクストなコミュニケーションを取るのが苦手だ。ついついローコンテクスト的な手法を取ろうとするから、何をするにも他の人よりも時間がかかる。こちらはローコンでなんとか手がかりや足跡を残そうとしているのを知ってか知らでか、気軽にハイコンで応答されると行き場のない悲しみがじわじわ湧いてくる。

 

 MOVIX日吉津で『ミラベルと魔法だらけの家』を観た。すごく面白かった。主人公ミラベルの周辺にいる女性キャラクターが男性の不在によって、規範的であらなければならないとする固定観念を自身でどんどん補強している様子が多層的に描かれていると感じた。

 ミラベルの祖母・アルマは亡き夫に代わってマドリガル家の繁栄に躍起になり、よりよい家長であろうと努めているように感じた。ミラベルの長姉・イサベラは、規範的な女性らしさを重んじ、家長ならびにマドリガル家を立てるために好きではない男性との結婚を予定している。ミラベルの次姉・ルイーサは、物語の舞台であるエンカントで暮らす人々の困りごとを一手に引き受け解決しようとしており、その重責はミラベルのおじ・ブルーノの長らくの不在によってより重みを増していたように感じた。それぞれが抱える役割やギフトによるプレッシャーや苦悩を、マドリガル家の血族で唯一ギフトを持っていない主人公のミラベルが解く役割を果たしていた。

 

 11月5日にリリースされたDijonのファーストアルバム『Absolutely』が好きでよく聴いている。特に6曲目の「The Dress」がお気に入り。Dijonは楽曲のボーカルや演奏において、意図して過度な刺激を与えるようなアレンジをすることがしばしばあるが、この楽曲は比較的穏やかな楽曲で、アルバムの流れを汲みつつもシングルカットを見込んでいるかのような、アルバムの中盤で一際目立つ楽曲だと感じる。

 楽曲で描かれる二人の関係性がどのようなものなのか想像する。過去のお互いの習性を知っているような歌詞が含まれることから、気心の知れた付き合いの長い友人か、はたまた元々はパートナーで現在は友人関係にある二人なのだろうかと想像をめぐらす。