高橋源一郎の飛ぶ教室
高橋源一郎さんが現代の世相や時局を分析し、おすすめの一冊を紹介する「ヒミツの本棚」、今週はマーガレット・アトウッド『侍女の物語』でした。
高橋「さっきディストピア小説という話をしました。これはトランプ政権ができて、一種の宗教原理主義ってところもあったでしょ。で、だからこういう時代だからという風に読まれたんですが、ディストピア小説って、ジョージ・オーウェルの『1984年』とか、それからレイ・ブラッドベリの『華氏451度』とか、ザミャーチンの『われら』とか、たくさんあるんですけど、その中でもやっぱりアトウッドの『侍女の物語』は、ここで読まれたっていうのは、やっぱりね、男性作家と視点が違うっていうことですよ。あのね、もちろんディストピアものの小説はみんなよく書かれていて、女性もちゃんと出てくるんです。オーウェルも出してるし、ブラッドベリも出して、きちんとした役割をその小説の中にはあるんですが、どこか読んでると、今のディストピアどこかおかしいと。要するに、過去にあんな素晴らしい時代があったのに、どうしたこんな時代になっちゃったんだっていう想いが。でもね、アトウッドを読んでると、いやいや、既に女性にとっては、現状そもそもディストピアでしょっていう。そういうところはありますよね。つまり、別姓が認められない社会ってオブフレッドじゃないですかっていう風に言ってみると、男性よりも女性の方がこの社会のディストピア性には気がつくってことです。これがやっぱり女性が書いているディストピアものっていうのはいくつもあるんですけど、やっぱり一歩先に、一歩深く、一歩男性作家が気がつかないところを書いている。これはね、認めざるを得ないですね。で、しかも同時に、このアトウッドの小説にもありますけど、だからといって、男性が女性に対して勝ち誇っているんじゃなくて、男性もまたこの世界の中では、要するに非常に寂しいところに置かれているっていう解放は、同時にくるっていうことは示唆していると思います。まあ本当に今読むと、いろんな意味で、特に今ですね、染みるんではないかと思います。」
ワンダヴィジョン
アガサ「前に進むには戻るしかない」
Agatha: The only way forward is back.
(2021年2月26日配信 『ワンダヴィジョン』第8話「前回までは」より)
サワコの朝(ゲスト:小池栄子)
小池栄子さんが一番嬉しいと感じる言葉。
小池「よくインタビューでも言ってるんですけど、一番嬉しい言葉は、女優に限らずですけど、表現者として、『小池さんが出てると見たくなります』っていうお手紙とか頂くと、すっごく嬉しいです。『この時間普段寝ちゃってるんですけど、小池さんが出てるんだったらこのドラマ録画します』っていうお手紙とか頂くと、それは私自身として評価していただいてるんだなって思って、ずーっととにかくわくわくみんながしてくれるような人ではいたいんですよ」
マツコ&有吉かりそめ天国
変わりゆく東京と思い出の街。
有吉「下北沢もすっかり変わってたな」
マツコ「下北もなんかあれ地下になって何かが変わったよね」
有吉「駅も全然違うもんね。こないだ久々に下北まで歩いてさ。昔住んでた家とかね、1年に1回ぐらい見に行ってんの、俺。ビルになってた、アパートが。うわ〜って。で、大家さんち行ったら、大家さんちもビルになっててさ。あぁ〜ついにかって」
マツコ「あれやんない方がいい。私もさ、さっき商店街の話したじゃん。昔住んでたさ、大体、幡ヶ谷とか中野の辺りをうろうろしてたから、あの辺いっぱい商店街あったのよ。もうほんとシャッター通りになっちゃってて。私ちょっと泣いちゃったもん。あ、もちろんちょっと陰に隠れて泣いたわよ、恥ずかしいから。ちょっともう、あんなに夕方とか人が溢れてたのに、いっつも行ってたお惣菜屋さんみたいなのがなくなっててさ」
有吉「行くと寂しいんだけどさ、ちょっと見たくなるね」
マツコ「まあね、なっちゃうね。私もだからたまに夜とか車運転してふって行っちゃうもん、昔住んでたところ」
有吉「こないだ下北周辺でよく行ってた散髪屋さん、ちっちゃい床屋さんだから、もうないだろうなって思って行ったらあんのよ、やっぱ地域密着だからしっかり。4人ぐらい従業員さんがいたのね、お兄さん方が。こうやって(店内を)ちらって見たらさ、4人いらっしゃるんだけどさ、4人とも老人。変わらず。みんな白髪」
マツコ「いい話ね、誰一人辞めなかったんだね。大将がいい人なんだろうね」
有吉「だからなんか嬉しかったな。残ってるってね、やっぱりこれだけ変わるから嬉しいのよね」
(2021年2月26日放送 テレビ朝日『マツコ&有吉かりそめ天国』より)
山本さほ『この町ではひとり』
漫画を描き始めてから知ったのですが、自分の頭の中にずっとあったものを漫画にすると頭から手に、手から原稿に記憶が抜けていく不思議な感覚があるのです。例えば最近起こった面白いことを人に話すと、話すことによって記憶が呼び戻されて脳に固定されていくような感じがあるのですが、何故か原稿に落とし込むと、まるでそれが自分の記憶ではなかったかのように脳からスーッと抜けていってしまうのです。
よくエッセイ漫画の事を人生の切り売りだと言いますが、本当にその通りかもしれないと最近思っています。
今回、「この町ではひとり」を描いたことにより、当時の辛かった自分や、悲しかった記憶が綺麗に成仏していくような感覚を覚えました。
(山本さほ『この町ではひとり』あとがきより)