言葉を待つ

2021年02月15日(月)

晩ごはんに昨夜作った茹でブロッコリーの粒ピーナッツ和えを食べる。味付けは白だしと醤油。塩茹でしたブロッコリーも好きだけど、塩以外の味付けをすると、つぼみの部分に味が染み渡っておいしい気がする。

晩ごはんを食べて、近所のロイヤルホストへ。ドリンクバーを頼んで、TOEICタイ語の勉強をする。ロイヤルホストでは、ドリンクバーだけで過ごすときと、ドリンクバーに加えてパフェなどのサイドメニューを注文するときとがある。割合で言うと8割ドリンクバー、2割ドリンクバー+サイドメニューくらい。お冷やおしぼりを渡されるタイミングで、早速にドリンクバーを頼むと、追加の注文がないメニュー表が不要な客だと判断され、メニュー表を下げられてしまう。そこに自分の要らぬプライドみたいなものが邪魔して、あとでなにか頼むかもしれないのでメニューこのまま持っててもいいですかとかときどきはったりをかましてしまう。みっともない。そういう決まりの悪さを改めたい。

勉強の合間、Facebookを開くと、大学のときの知り合いが土曜夜のことを記録していた。不測の事態に驚きながらも、研究室の人たちと連絡しあい、大学の安否確認メールに対応し、非常時の持ち出し品を要領よくまとめ、生活用水を貯めるなど、訓練と経験に裏打ちされた知り合いの一連の行動に敬意を抱く。

土曜の夜、私はスーパー銭湯のサウナにいた。その日の昼間お世話になっていた近所の好きな銭湯が潰れてしまったことを知る。その寂しさを紛らわすように、自転車で20分くらいのスーパー銭湯へ立ち寄った。サウナでビートたけしさんと安住さんの『新・情報7daysニュースキャスター』を見ていた。CM明け、安住さんがヘルメットを被っていた。スタジオから報道フロアへ画面が切り替わり、大きな揺れだったことを知る。普段ならすぐに付け加えられる「津波の心配はありません」という言葉がなかなか報道フロアのアナウンサーの方から発せられないことに、気持ちが落ち着かない。緊張して身体が強張る。安心できる言葉を今かいまかと待つ。サウナ室にはそれまでに10分ほど入っていたが、時間のことは頭の隅に追いやられ、続報を求めテレビ画面を凝視していた。

シネマクレールで、金曜から『心の傷を癒すということ』の劇場版を公開している。阪神・淡路大震災当時、被災者の心のケアに尽力された安和隆を描いた作品。ドラマ版を観たがとても好きな作品だった。日曜に観に行こうと思っていたが、上映時間を間違えて行けていなかった。ますます今観なければいけないという気持ちになる。今週は19時半からの上映回があるので、仕事を余裕を持って上がれたら観にいこうと思う。

 

『生活が踊る歌 Ep.6: Don't Be Silent!: 2010年代のフェミニストアンセム

ロイヤルホストからの帰り道、Amazon MusicPodcastで『生活が踊る歌』を聴く。洋楽トピックの鮮度が高く、ニュースに対して高橋芳朗さんとジェーン・スーさんの考えが擦り合わされる様子がおもしろい。今週は、The Weekndのハーフタイムショー、Britney Spearsのドキュメンタリーに端を発する、消費されるセレブリティの話(Justin Bieber、Miley Cyrusなども例示)がテーマになっていた。収録時期がJustin Timberlakeの応答以前だったようで、彼の謝罪については触れられていなかった。そういえば、土曜の夜にサウナに行ったとき、『新・情報7daysニュースキャスター』で同じくハーフタイムショーの話をしていた。そのときの取り上げ方は、YouTubeができたきっかけはJanet JacksonJustin Timberlakeのパフォーマンスでの出来事がきっかけだったということを報じていた。このときもJustin Timberlakeのことは触れられず、Janetだけが取り沙汰されていた。そのことにむっとした。『生活が踊る歌』では毎回プレイリストが作成される。今回のプレイリストは2010年代のフェミニストアンセム。自分がちょうど洋楽を聴き始めた頃の楽曲から始まるプレイリスト。その楽曲を聴いていた当時の様子が思い起こされる曲もあった。

 

2021年02月16日(火)

『心の傷を癒すということ 劇場版』

仕事終わりにシネマクレールで『心の傷を癒すということ』を観る。私にとって、この作品はとても大切なものだと感じる。これはドラマ版を観たときにも思った。

まず、この映画には柄本佑さんの演技の素晴らしさが詰まっている。高校時代に学校の屋上で永野良夫の著書を読むシーン、濱田岳さん演じる和隆の友人・湯浅と自転車で近所の公園へ出かけるシーンでの自転車の漕ぐときの少し前のめりの姿勢、夏木マリさん演じるママが営むジャズ喫茶のカウンターで、永野良夫の本を読むときの手の置き場(両手を本に添えるのではなく、椅子の座面に置いて読書している)、これらのあらゆるシーンで上半身が伸びていて、姿勢から意識して演技されているのが伝わってくる。

姿勢だけでなく、細やかな動作も素晴らしい。大学時代、本が部屋のあちこちに積まれた下宿先で、読書中に友人に明かりを消されてしまったときの、本を反射的に間接照明へ近づける動作。車椅子に乗った状態で平岩紙さん演じる新島に白衣を着せてもらうシーンのカッターシャツの袖を指先で押さえる瞬間など、細やかで愛おしい立ち振る舞いや仕草であふれている。

主題歌は、森山直太朗さんが本作のために書き下ろした「カク云フボクモ」。リズミカルな言葉遊びがふんだん施された楽曲だった。シネマクレールを出てから、ストリーミングで聴こうと検索したら、まだ音源としてリリースされていないようだった。

 

個人的な話だけど、中高生のとき、私は臨床心理士になりたかった。でも、あるとき私は相談者に寄り添うあまり、たぶん自分が先に潰れてしまうだろうと思って、結局その道には進まなかった。

大学生のとき、主専攻の副次的な学びのなかに、ケアのことやカウンセリングのことを部分的に学ぶ機会があった。それは私にとって、とても大切な機会だったと思う。臨床心理士やカウンセラーにはなれないし、ならない選択をしたけど、そういう職業につかれておられる人たちのスタンスを部分的に知ることができたのが嬉しかったし、そこで学んだことは少なからず自分の血肉になっていると思う。

 

2021年02月17日(水)

毎週木曜日にマイさんのオンラインDJイベントにお客として参加させてもらっている。毎回、マイさん含め5人くらいのDJがそれぞれの持ち時間の中で選曲をしている。これまで4回ほどこのDJイベントに参加した。参加すると毎回のように、DJのどなたかが松原みき「真夜中のドア~stay with me~」をかけていることに気づく。私はこの楽曲について何も知らなかったので、ネットで調べると昨年12月に松永良平さんがbillboardに寄稿された記事を見つける。

Night Tempoさんがこのオリジナル楽曲をリエディットした楽曲を今月12日にリリース。

 

Sexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」

仕事から帰宅してから自宅のトイレでSexy Zoneの新曲「RIGHT NEXT TO YOU」を聴く。あまりの素晴らしさにため息や感嘆の声が漏れる。K-POPが牽引するトレンドを取り入れながら、メッセージはこれまでSexy Zoneが打ち出してきた姿勢が貫かれているため、楽曲として太いと思う。

Sexy Zoneの楽曲の歌詞は強いとかねがね感じる。というのも、歌詞がリスナーだけでなく、メンバー同士に(ときにメンバー自身に)向けられているように思えるからだ。リスナーの一人である私は、前者の意味でまず励まされ、聴き込むほどに後者の意味で楽曲を解釈して、楽曲を一方的に余すとこなく堪能している。

今回の「RIGHT NEXT TO YOU」は、Sexy Zone結成10周年を記念したベストアルバムに収録される楽曲ということもあり、どちらかといえばファンに向けられた楽曲で、ややラブソングにアクセントが置かれているように感じられる。しかし、それでもSexy Zoneがこれまでに発表した楽曲で紡いできた数々のメッセージが、メンバーを想う意味合いでこの楽曲をさらに補強していくように感じる。

この楽曲で歌われる「You」には、ファンはもちろん、メンバー同士にも向けられていて、昨年グループに復帰した松島さん、そして今現在活動を休止しているマリウスさんへのまなざしが伺える。

「Finally found a perfect place」という歌詞は、昨年リリースした「NOT FOUND」と対になっているように感じるし、「Perfect place」には、昨年リリースした「RUN」の「正解なんて意味ない僕らだけの 答えにたどり着けばいい」という先に描かれた場所のようにも思える。

昨年リリースしたアルバム『POP×STEP!?』収録のtofubeatsさんによる楽曲「Melody」で歌われる「明日のこともわからないのに生きるのは難しいね でも目の前の人くらいは大事に僕ならできるはず」と歌っていた優しい姿を、この楽曲で「I’m right next to you」と歌う姿に重ねる。

そういうふうに考えていくと、この楽曲は、一人一人のメンバーが自分自身をすぐ隣で信じてあげる楽曲のようにも思えてくる。「HIKARI」で歌われる「いつの話してた君とは僕だったのかい?そうなの?何か答えて!」、「それでいいよ」の中で歌われる「画面を覗き込んでもそこに現実(リアル)はないからどこかの誰かじゃない自分になれたらまた一つ強くなれる」という励ましをメンバーにも、自分自身にも向けているように感じる。

声の太さゆえにどうしても中島健人さんと菊池風磨さんがやや重宝されてしまいがちなところを、佐藤勝利さんと松島聡さんのよさも要所に織り込むような歌割りやダンスフォーメーションになっているのもよかったと思った。松島さんのダンスは特に細やかで見入ってしまう。

全編英語詞はミュージックビデオが作成されたものとしては初となるが、新レーベルに移籍してからはシングルのカップリングに全編英語詞の楽曲が入るようになった(RUNではSmall Love Song、NOT FOUNDではArms Around Me)。そのニ曲ともに、マリウスさんが楽曲の大きな推進力になっていたように思う。ご本人としても焦ったいだろうとは思うけれども、今はゆっくり休んでほしいという気持ちになる。

ミュージックビデオも印象的。『POP×STEP!?』のリード曲「極東DANCE」や「Sexy Zone POP×STEP!? TOUR 2020」での舞台美術に通ずる、日本以外の場所で暮らす人たちがイメージするオリエンタルさを継続して表現しているように感じる。

贅沢を言えば、RUN、NOT FOUND、RIGHT NEXT TO YOUが収録されたオリジナルアルバムも聴きたかった。

1:30からの歌い出しが、Ellie Goulding「Love Me Like You Do」のような艶やかなメロディー。

これはあくまで個人的な予想だけど、このMVは2番部分がカットされているのではないかと思う。新レーベル移籍後に公開された2つのミュージックビデオにも今回と同様、楽曲タイトルの最後に(YouTube ver.)とクレジットされており、「RUN」は1番まで、「NOT FOUND」はCメロ途中までというように楽曲がフルでないかたちでアップされている。しかし、今回は楽曲の終盤まで映像が公開されていることから、これは歌番組でのパフォーマンスサイズを意識してMVを編集していて、実は1:30のところから2番部分が始まるのではないかと思うようになった。もちろん2番部分を大胆にカットしてCメロ、ダンスブレイクを加え、3分未満の楽曲としてリリースするのであれば、日本のポップスではなかなか見られないその気鋭さをお祝いしたい。