Broke, Still Broke

2022年9月20日(火)

週末にiPhoneiOSを16にアップデートした。以来、携帯のロックを解除するとき、そのときに聴いている音楽やラジオ番組を誤って一時停止してしまうことが著しく増えた。これまで携帯のロックを解除するときに何気なく触る携帯のタッチパネルの部分とiOS16環境下での再生/一時停止のボタンがすごく近いらしい。既存の習慣と新しい習慣との調整が今はまだうまくいっていなくて、急に音楽が止まった…んじゃなくて自分のミスタップだという認知が度々発生する。

 

仕事終わり、LIQUIDROOMでSamm Henshawのライブを観る。Samm Henshawの初来日ライブは当初2020年5月1日に公演予定だったが、コロナの影響で2021年9月10日、2022年3月3日、2022年9月20日とこれまでに3度の延期を経て、今回ようやく開催に至った。在宅での仕事を終えてから移動し始めたこともあり、開演から少し経ってから会場に入る。入り口のドアを開けた瞬間からライブがうんと盛り上がっていることを感じ取る。パフォーマンスが終わるたびに湧き上がる拍手や喜びの声も惜しみなくたっぷり注がれているように感じた。それはSamm Henshawとバンドメンバーによる並々ならぬパフォーマンスの素晴らしさに加えて、ライブを待ち侘びていた人たちの喜びみたいなものも反映されているような気がした。演奏中に観客を嬉しそうにたっぷりじっくり見回すSamm Henshawがとっても素敵だった。ライブ終盤、2021年リリースのシングルStill Brokeと2018年リリースのシングルBrokeをつなげるパフォーマンスがあった。自分もこの2曲をPart 1、2楽曲として捉えて続けて聴くことがあったため、この日の選曲で一番舞い上がった。

 

電車の行き帰りで武田砂鉄、又吉直樹『往復書簡 無目的な思索の応答』を読み終える。購入しようか半年ほど悩んだが、結局けちって週末図書館で借りた。明治が販売している固いグミのコーラアップを食べるときみたいに噛み切れていないのに目だけすいすい進んで飲み込んでしまったページもある。もう一度気になったところをじっくり読みたい。

又吉「なにかを表現するうえで信じられることは、自分に発言する場や、文章を書く場が与えられているということだけです。だから、文章は自分が書きたいように書きます。それが読者の日常や記憶に接続できればと思うこともあれば、自分で作品として完結させたい時もあります。場が与えられている限り、すべて自分の好きなようにやります。つまらなければ表現する場は奪われるはずですし、そういう世界であってほしいと願っています」

武田「自分はアナタが考えていることを知りたいのに、こうするとイイ感じに思われるよ、とレクチャーされると、ぐったりします。ぐったりした後で、矢継ぎ早に注がれた言葉を振り返ってみると「…べきだよ」「…しておけばいい」「…がベスト」という指南の連発。指南はありがたいのですが、賛同を得るためには自分の考えを変えたくないのです。世の空気を察知して順応すればするほど、影響力が獲得できる、と帰着する働きがおしなべて苦手です。

同業者というか、文章を書く人が、どうすれば影響力を持てるか、みたいな議論を交わしている姿を頻繁に見かけます。アナタの効率的な戦略ではなく、アナタが煮込んでいる思索を知りたい、と思ってしまいます」

(武田砂鉄、又吉直樹『往復書簡 無目的な思索の応答』(朝日出版社、 2019))

 

最寄り駅からスーパー、スーパーから家までの帰り道にらじるらじるで『又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間』を聴く。この日は普段よりも番組が1時間長い2時間スペシャル。茨城県土浦市でグランピングをしながらの生放送だった。普段のスタジオからは聴こえない鈴虫の鳴き声や焚き火のパチパチする音が3人のおしゃべりを包んでいた。土浦の音が自分の帰り道の街の音とも結びついて、不思議な視聴体験だった。

御三方はもともと同居生活をされていた経験があって、それぞれのいいところや反対に少しいい加減なところを知っておられる様子がおしゃべりから伺える。でもそこでそれぞれのいい加減なところと取り立てて執拗に追及することはない。誰かが自分のだめなところをこぼすと、そうだよね〜とかそうやな〜などと反応するだけ。あとはそれぞれで抱き抱える。その3人の関係性にすごく安心する。今日の放送の中でも3人が同居生活をしていた話があって、特に児玉さんの優しさに気づいて、改めていい番組だな〜と思った。

向井「もちろんいろんな能力とか絶対俺と児玉さんいろんなところ違いますけど。人付き合いと、あとなんとか売れたいっていう野心?を俺から全部抜いたのが児玉さんなんです」

又吉「なんで抜いてまうんや。装備されてなかったんや」

向井「でも、そうじゃないと出せない魅力っていうのも確実にあるじゃないですか」

又吉「あるな〜」

向井「それがやっぱ児玉さんにあるから」

又吉「周りを蹴落とそうみたいなことは絶対ないもんな」

向井「ないんですよね」

児玉「たしかにな〜」

向井「だって一緒に住んでたほんっとにめちゃくちゃ忙しかったもう真っ只中、僕とか又吉さんも芥川賞とる直前とか、とった後とかも一緒に住んでましたけど。で、朝俺が早く起きて家出てって、とかっていう間もずっと児玉さんは家にいて。で、昼頃出てったりしてたときに、『もうあんなんなら俺は売れたくねえ』って言ったんだよ」

又吉「言ってたな」

向井「俺ら二人を見て」

又吉「『二人見てたら帰ってきてもなんか仕事の話して、明日のこと考えて、もう売れたくない』って」

児玉「俺ね、本当にしんどそうだったのよ。マジで、二人が。あのとき特に。そのときに(一緒に)住んじゃったもんだから。こんなになるんだって」

向井「そうね」

又吉「俺らが朝出て行くとき児玉が寝てて、帰ってきたらもう寝てるときあったもんな」

2022919日放送 NHK第1『又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間 はじめてのグランピングSP』)

 

帰宅してスーパーで買ったダノンビオマスカット&洋梨を食べて寝る。