恥ずかしさ

2023年3月23日(木)

 朝から雨降り。出かける前に、もしかしたら外は少し肌寒いかもしれないと思ってクルーネックの紺のニットを着込む。だけどそれがよくなかった。駅のホームに着く頃には汗だくになる。誰かがニットを着ているのを見るのは好きだけど、私自身はほかの人よりも暑がりだという自覚がある。一年のうちでニットを無理なく着られる日がたぶん一週間分もない。そのことは自分が一番よく分かっている。アウターの下にニットが着られそうと一瞬思う日も、結局シャツにアウターだけでよかったりする日の方がうんと多い。それでも一年のうちに数日、今日この気温・天候はニットの上にアウターを羽織るのがちょうどいいんじゃないかと自分の暑がりを考慮に入れず、期待してしまう日がある。今日がその日だった。額を首元から出てくる汗を無印の携帯用ペーパーナプキンで汗を拭いて電車を待つ。

 花粉症の症状が先週から驚くほど和らいでいる。受診する内科を変えて、処方してもらう飲み薬を変えてもらったことと、IHADAのアレルスクリーンという花粉などが顔に付着しないように顔に吹きかけるスプレーを使用してからというもの、朝の目やに、日中の目のかゆみ、鼻のむずむずもびっくりするくらいおさまっている。実家にいた頃は、この時期になると母も花粉症で同様の症状に悩まされていたので、先週末にIHADAのスプレーを贈った。母も症状がずいぶん緩和されたらしいことが父、母、姉、私のグループLINEで情報共有された。

 午前中、先日の祝日に友達がくれたごまかりんとうを食べながら仕事をする。デスクでボリボリ食べる音が響くのが少し恥ずかしかったので、口に入れたかりんとうはすぐに噛まずに、口の中でふやかしながら食べる。

 お昼休憩。朝出かける前にささっと詰めたお弁当を食べる。今日のお弁当箱は深めのタッパー(無印の蓋をしたままレンジで使えるフードコンテナ)で、白ごまを混ぜたごはんの上にプチトマトとブロッコリーと玉子焼きと鶏むね肉を片栗粉で焼いたものが乗っかっている。弁当箱のタッパーの底面とお弁当袋(無印のアルミインナーポーチ)のマチがあっておらず、弁当箱の方がやや大きいので、底が袋の想定よりも広がり、タッパーを入れた状態で弁当袋を折り畳むと、弁当袋が折り畳みやすいように前もってクセをつけている折り跡とは異なるところに折り目がついてしまって、ひどく不恰好になる。

 仕事終わりに中野のブックファーストに立ち寄って又吉直樹さんのエッセイ『月と散文』を購入する。事前にSNSを見たら数量限定でサイン本があると告知されていたので立ち寄ったが、「サイン本は一人一冊まで」というポップだけが残っていた。後日他店舗でサイン本の機会を待つよりも、今日からもう読みたい気分だったので購入する。店員さんがブックカバーを本体カバーに折り込む形で簡易に付けてくださった。電車に乗ってからブックカバーを本に折り込んだときに左右にできる袋に表紙の端を入れようとするが、あとちょっとのところでもう片方の表紙の端がずれてしまって入らないというのを何回が繰り返してしまう。もどかしい。このもどかしい様子を電車の中で誰かに見られていたら恥ずかしいと思って、何事もなかったかのようにしれっとその作業をやめて、読書に集中する。帰宅して落ち着いて表紙を180度以上広げたら簡単にできるのに、横着をするものだから余計に時間がかかっている。又吉さんのエッセイはところどころ『又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間』で聴いたことのあるエピソードも混ざっている。だけどラジオでの話し言葉と書き言葉でも、書けることや書きたいことが異なるので、要素が重なるところがあってもおもしろいと感じる。そして恥ずかしさを大切にして、自由に恥をかこうとする又吉さんがすごく素敵で、愛おしく感じる。私も、この美術展に行ったけど正直あんまりよく分からなかったとか、本を借りたのに途中やめで返却しちゃったとか、話題の映画でこんこんと眠ってしまったこととかを書いておきたいと思った。

全ての事柄が恥ずかしいなら、特定の恥ずかしさによって、自分の欲望や言動が制限されることはない。

又吉直樹(2023)『月と散文』KADOKAWA

 歩きながら本は読めないので、駅からの帰り道はラジオを聴くか音楽を聴くことが多い。木曜日の帰り道は『荻上チキ・session』を聴くことが多いが、今日の特集は、まとめて一度に聴きたいと思ったので、音楽を聴くことにした。選んだのはRyan Beattyの「Powerslide」。Ryanの3枚目のスタジオアルバム『Calico』が4月28日にリリースされる。先行シングルの「Ribbons」も好きだし、前作のアルバム『Dreaming of David』も好きだけど、楽曲な突き抜けた気持ちよさは1枚目のアルバム『Boy in Jeans』に収録されているこの曲からいつももらっている。新しいアルバムのリリースにあたって改めてこの曲の聴き心地のよさを感じている。

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