向井太一さんと小泉智貴さんの対談(2021年5月7日・14日放送『三井ホームpresentsキュレーターズ〜My Style × Your Style〜』)

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 TOKYO FMで放送されている『三井ホームpresentsキュレーターズ〜My Style × Your Style〜』、今月5月のゲストはシンガーソングライターの向井太一さんとTOMO KOIZUMIデザイナーの小泉智貴さんとの対談の模様が4週に渡って放送されています。現在放送されている第1週、第2週の話題が面白かったので書き起こします。番組の模様はラジオ番組放送終了後にPodcastでも配信されています。

 

向井「そもそも、あの形のドレスというか、あのスタイルが今もうTOMOさんのスタイルって定着してるじゃないですか。一番最初にあそこに行き着くまでにどういうインスピレーションとか、どういうきっかけで作り始めたとかあるんですか?」

小泉「あのデザインって4、5年作り始めてからやってるんですけど、制約がもともとあった中で、その中で自分のできることを最大限やったらあれになったっていう。例えば4、5年前お金もあんまりなくて、サンプルを作るのにそこまで予算が割けない。でもあの生地って結構ありふれてる生地なんですよ。なんか割とどこの手芸屋さんでも売ってるような実は生地であったり、だからこそ余った生地とかが、東京・日暮里って、余った生地が売ってる場所があるんですけど、そこに結構通って。で、あれがめっちゃ売ってあったんですね、いろんな色が。それを買い占めて。で、生地はあるけどこれで可愛いものできないかなって考えた時に、あのテクニックを色々試行錯誤しながら作って、って感じですね。だからまあ全部の色があるわけじゃないし、あと、それぞれの色も限られた数量しかないんですよね、余ったものだから。だからこそあるものを合わせて工夫するみたいな」

向井「なるほど。じゃあもともとあのデザインが頭にあって、素材を作ってとかではなくて」

小泉「全然全然。だから例えば自分が富豪の子どもとかで、なんでもしていいよ、なんでも作っていいよ、いくらでも使っていいよって言われてたら、たぶんあれはできないし、果たして一個のテクニックに集中できたのかどうかもわかんないですね。だから自由なだけがクリエイティビティを最大限にする条件じゃないのかなって、条件があったほうが自分は力を発揮しやすいですね、スピーディに。衣装の仕事も、もともとテーマとか、もちろんその人の好みとか、そういうのがあるので、それに合わせてベストを尽くすっていうのをずっとやってきたから、まあなんかそれに似てるのかも」

(2021年5月7日放送『三井ホームpresentsキュレーターズ〜My Style × Your Style〜』)

 

小泉「向井くんは、どうして今のアーティスト、歌うこととか曲を作ることっていうのを職業として選んだのかなっていうのをちょっと聞かせてほしいですね」

向井「もともとは音楽自体はすごく好きだったんですよ。ちっちゃいときから親がヒップホップとかレゲエとかを聴いていて。で、兄とかがもうずっとヒップホップ漬けで。だから家で自然に流れてたんですよね。海外のヒップホップ、R&Bとかレゲエとかが。でも最初は漫画家になりたかったんですよ、僕」

小泉「へぇ〜いつぐらいの話?」

向井「小学生、中学生くらいまでは漫画家になりたくて」

小泉「中学生とか割とリアリティがある」

向井「そうなんですよ。原稿用紙とかプロのやつ買って、ヒップホップ聴きながらマンガ描くみたいな」

小泉「ちなみにどういう系の?少年漫画系?」

向井「えっと、今だから言えるんですけど、結構恋愛ものとかを描いてて」

小泉「え、見たいそれ」

向井「それで、中学生になってようやくこう将来の夢についてリアルに考え始める時期じゃないですか。そのときって進路を決めるときとか。で、そのときに僕人物を同じ角度でしか描けなくて。右寄りじゃないと描けないとか」

小泉「じゃあみんなが全員同じ方向を向いてるみたいな」

向井「で、ちょっと遅かったんですけどそのときに初めて、あ、自分は漫画家ではやっていけないなっていうのを感じて。で、昔からやっぱ歌うこととか音楽を聴くことが好きで、そこで初めて、その表に出て自分が歌う側について意識し始めたんですよ。カラオケとかはずっと行ってて、そっからですね。もうオーディションとか何十回って受けてて」

小泉「あーそっか、オーディションの世界ですもんね」

向井「全然ね、オーディション上手くいかなくて。高校卒業してすぐ上京したんですけど、自分が作る側に回ったんですよ。制作をちゃんとするようになって。で、そこからはオーディションとかも受けずに、ライブ活動とかを自分で一人でやってて、から、今の事務所に見つけてもらって、デビューしたって感じですね」

小泉「そっか、難しいですよね。だって、たぶんオーディション受からなくて、挫けちゃう人も絶対いるじゃないですか。でもそこで自分でもうやっちゃえってなったから上手くいったっていうか。自分もファッションは学生のときとかコンテスト出したりとか全然してたんですけど全く受かんなくて。まあでも、まあなんていうんだろう、むかつくなと思って、だったら自分でやってやろうってなった、だから一緒ですよね、見る目ねえなみたいな」

向井「なんかそのときって漠然と、絶対自分はデビューできるんだみたいな変な自信があって。あとはプライドがあったんですよ、そのときは。当時って中学生とか高校生のときってほかでずっとブラックミュージックを聴いてた人がいなかったりとか、当時から歌とかに癖があったので、なんか認められない理由もなんか納得してたんですよね、自分の中で」

小泉「あ〜なるほど。万人受けするわけではないかなみたいな」

向井「そうそう。でもそこはなんか自分の中で変える気はなくて。まあ理解されないのはまだ時代が追いついてないからだって」

小泉「でもほんとにオーディション見てる人だってどんな人たちなのか分かんないし」

向井「まあやっぱあとクリエイティブなことなんで、正解がないのも分かってたんですよね」

小泉「まあ、あとはあれじゃないですか。人の目を引かないとキャッチがないと。やっぱこれだけモノをつくってる人がいっぱいいる中で、まあそういう面でいうとどう差別化していくか、どう目立つかっていうのは」

向井「あ〜それはでも分かりますね」

小泉「ね、だって向井くんは自分の作品を…SoundCloud?」

向井「そうなんですよ、最初に、デビュー前に毎月新曲をSoundCloudに、ネット上に放出してたんですよ、フル尺を。最初はとにかくもう知ってもらいたいっていうのと、何の知名度もなかった状態からスタートしたんで、なんか特に僕がデビューした年って、僕と同じようなジャンルをベースにしたアーティストがめちゃくちゃ出てて。差別化するみたいな、人と違うことをやるみたいなのはすごい意識してやってましたね」

小泉「なるほど。だって、じゃないとその人を選ぶ理由が、どうしてもこの人、どうしてもこれが欲しいって思わせるってことですよね、差別化してくってのは」

(2021年5月14日放送『三井ホームpresentsキュレーターズ〜My Style × Your Style〜』)

 

小泉「普段、自分自身の楽曲とか歌詞を書くときに、どういう枠組み、きっかけで作ってくのかなみたいな」

向井「僕は基本的に気持ち先行で作ることが多くて、感情が揺れ動いたときとか、なんか分かりやすく言えば、失恋したら3曲くらい歌詞をダーッて書くみたいな」

小泉「えーめっちゃいいっすね、好き好き」

向井「そこはもう自分がアーティストであってよかったって思います。本当になんか転んだままでは終わんねえぞみたいな」

小泉「ただじゃ起き上がらないみたいな、でもやっぱモノを作る人って生活すべてが、全部のことが作ることに繋がってないですか?」

向井「分かります分かります」

小泉「なんか、だからなんかそれがたまにちょっと苦しいときもありません?例えば映画観るとか美術館行くとか本を読むとか、服を選ぶっていうのもそうかもしれないけど、なんかそれが結局ちょっとなんだろう」

向井「つながっちゃうんですよね」

小泉「リサーチ、インプットみたいな目線でやっちゃって、ピュアに楽しめない、仕事と趣味が繋がっちゃって。なんか何するにしても、あ、これ使えそうみたいな。すぐメモ取っちゃうみたいな」

向井「たしかに、わかりますわかります」

小泉「メモ取る?」

向井「取ります取ります。でもあんまメモ見返すことないんすよね、僕。歌詞とか書き溜めるんですけど。そのときそのとき思ったこととか感じたことを吐き出すように書くことが多くて」

小泉「じゃあ例えば、新しいアルバム、新しい曲とかが出るときに、あ、向井くん恋してんだとか、なんていうんだろう、なんか辛いことあったのかなとかってそれが直接分かるっていうのがファンの人の楽しみ方?」

向井「でも恋愛に関しては過去振り返ることがあるかもしれないです。辛いこととか、嬉しいこととか。メモを見返すこととかあんまりないんですけど。例えばなんか特定の人がいて、その人の癖を思い出したりとか、思い出を思い返したりとか、僕が書くラブソングってほとんど誰かがいる曲が多いですね、そう考えると。たしかにそういう意味ではラブソングはリアルタイムじゃないときもありますね」

小泉「あーでもわかる、今のフィルターを通した過去の自分みたいな」

向井「あ、そうそうそう、めっちゃくちゃいいことを、ありがとうございます。まとめてくれて、わかるな〜」

小泉「自分も向井くんの歌、歌詞が好きっすね。『Love Is Life』出たときすごく聴いてて。ちょうど恋愛のそういうときに聴いたから。個人的なエピソード、好きな人にこういういい曲あるよみたいな、Apple Musicのリンク送って、『聴いて』とかやりました」

向井「ありがとうございます」

小泉「お世話になりました」

向井「いい影響を。それは嬉しいな〜」

小泉「なんていうんだろう、やっぱあれって、恋したときのうきうき感、ね。ちょっと恥ずかしいんだけど、でもなんかそれを言葉で言うのはできないけど、まあ曲送って、歌詞見てもらってちょっとなんていうんだろう、気持ちをなんとなく伝えるみたいな。でもね、歌ってそういうよさもあるし」

向井「めちゃくちゃいい使われ方をして。ありがとうございます」

小泉「それを今日言わなきゃと思って、ありがとうございましたって言わなきゃって」

向井「いや〜嬉しいな〜」

(2021年5月14日放送『三井ホームpresentsキュレーターズ〜My Style × Your Style〜』)

 

書き起こしをしてから、番組のホームページのリンクを貼ろうを調べたら公式で書き起こし記事がありました。少し悲しくなりました。より正確な公式の書き起こしもぜひご覧ください。

書き起こし記事のタイトルには、自由だけがクリエイティビティを最大限にするとありますが、小泉さんのお話は制約があることでクリエイティビティがはたらくという趣旨のお話だったので誤りのように感じます。