カラッと話せれば

 5/1、この日は在宅勤務。自分が携わっている業務で昨日からトラブルが起こっている。本当であれば当事者間で解決すべき内容を自分が下手に関与してしまい、巻き込まれている。それで昨日は双方からこっぴどく怒られたり、現状について深刻な状況を吐露されてしんどかった。やり場のない気持ちになった。お金が関わることなので、利用者の方も穏やかでない。難しい。

 カーテンを洗濯する。この日洗濯したのはドレープカーテン。1階に住んでいるので、一度にレースカーテンとドレープカーテンを洗濯してしまうと、中の様子があけすけになってしまう。こないだ洗濯したレースカーテンにプライバシーを守ってもらう。

 アシックスで注文していた荷物が届く。蛍光色のジャケットと黒のキャップを買った。どちらもランニング用のもの。アシックスでは蛍光色の黄色のことをフラッシュイエローやサワーユズと呼んでいるらしい。蛍光色のボキャブラリーを学ぶ。自分がこれまで使っていた言葉にボキャブラリーが増えると結構嬉しい。そういえば、この日放送していた『高橋源一郎飛ぶ教室』では、Zoomのことを「インターネットを使ったテレビ電話」と言い換えていた。特定の商品名を用いることを避けるNHKの番組ではこういった言い換えを知ることができる。

 先月くらいからスーパーに行くと、お店のあちこちで明治タンパクトの商品を見かけるようになった。ホームーページを調べると、ヨーグルトやミルク、カフェラテ、チーズなどの乳製品だけでなく、チョコレート、アイス、グラタン、スープなど手広く展開しているようだ。たんぱく質をここまで押し出されると鬱陶しく感じる一方で、でも栄養成分表示欄を見るとき、たんぱく質を気にしてしまうから難しい。本当は気にしてるけど、気にしてるでしょって迎合されると気にしてないって言いたくなる。この気持ちは金曜ロードショーが打ち出したバルス祭りのときと似てる。

 二週間以上散髪できていない。そのため、横の髪がぼわぼわしてきていた。この日は家にあるバリカンでQBハウスで普段してもらっているようなことを真似する。三面鏡と風呂場の鏡を活用して、6mmのアタッチメントで首元と横の髪を刈り上げる。思ったより上手にできて嬉しかった。バリカンは大学生になるときに買ったもの。大学は誰も知り合いがいない環境だったので、高校までのイメージがリセットされるいい機会だと思って、そのバリカンを使って入学直前に頭を坊主にした。

 この日から特別定額給付金の手続きが始まった。マイナンバーカードはすでに取得していたので、オンラインで申請する。手続きにあたり、何度かパスワードを求められる場面があって、途中までは正しいものを入力できたのだけど、最後の署名用パスワードというのがどうにも思い出せない。思い当たるものを入力し、3回連続で失敗したところで、ちょっとまずいなと思い立ち止まる。失敗はいくらでもしていいわけではなく、5回連続で間違えるとアカウントがロックされてしまうらしい。それはなんとしても避けたい。家の中にあるパスワードを記録していそうなものにあたるも、自分がパスワードの取りまとめを始めたのがマイナンバーカード取得以降だったことを思い出し、捜索を断念する。

 パスワードを書き残していなくても、もしかするとどこかに原本的なものがあるかもしれないと思い、契約書や証明書などを取りまとめたファイルにあたってみる。このファイルは大学1年生のころから取りまとめているもので、この中から電子証明書の写しが発掘される。過去の自分に心の中でお礼を言う。そこに書かれている内容を1度打ち込むも、失敗する。いよいよ後がない。もう一度、タイプミスがないかを正確に確認し、再度ログインを試みる。ログイン失敗。アカウントがロックされる。その瞬間、平日の午前中同じようにアカウントをロックされた人たちやパスワード照会で市役所を訪れた人たちがソーシャルディスタンスを取り、窓口に列をなす様が目前に浮かぶ。肩を落とす。こういう自分の管理能力の不十分さからくる失敗があったとき、そのみじめさを自分で抱え込んでとことん落ち込んでしまう。

 この日のTBSテレビ『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』では、オードリーの特集を放送していた。姉曰く若林さんのインタビューがよかったらしい。『ナナメの夕暮れ』を好きだった人に貸したままになっている。今更返してというのもなんか違うので、近々買い直そうと思う。

 

 5/2、ワイシャツは、洗濯機で洗い終わってから干すまでの時間を1秒でも短くできるかが勝負らしい。これは職場の方がおっしゃっていたことだ。この日ワイシャツを洗濯しているときにそれを思い出して、洗濯が終わると、すぐさま洗濯槽からネットを取り出し、いくつかのネットの中からシャツの入ったネットを一番に開いた。しわが和らぐよう、肩の部分を持って勢いよく振ってハンガーにかける。洗濯物を干すとき、思い出す映画がある。それは若木信吾『白川夜船』。よしもとばななさん原作の映画。安藤サクラさんが洗濯物を干すシーンがあって、そのときの気だるそうで艶美な挙措が好きだ。

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 晩ごはんにナス、ピーマン、大豆のお肉で豆板醤で炒める。マルコメが販売している大豆のお肉という商品を試してみたくて作った。見た目や食感はかなりひき肉に近いが、噛んだときの甘みやうまみはひき肉の方があるような気がした。とにかくさっぱりしている。

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 それと、『暮しの手帖』で読んだにんじんとたらこの炒めたのを作る。たらこの筋の方は冷凍ご飯をチンしたのに乗っけて食べた。

 昨日買ったパイプユニッシュを洗面台、風呂場、シンクの排水溝にそれぞれ流し込む。ぬめり取りのためにはこの状態で30分くらい放置する必要がある。その間にゆで卵を作る。こないだ「北欧、暮らしの道具店」YouTubeチャンネルの動画を観たとき、ゆで卵を入れる際にお玉を使っていたが、自分はそういうところがいい加減で、手で転がし入れてしまう。30分経過までまだ時間があるので、トイレ掃除をする。トイレ掃除の際、便器は割と気を配って掃除するけど、タンクの蛇口周りの掃除がいつも手抜きになってしまう。

 夕方、ミスドのマフィンが無性に食べたくなり、ミスドのテナントが入っているちょっと遠くのスーパーへ行く。夕方だったためか、マフィンは売っていなかった。帰る。

 K野さんと夜おしゃべりする。昨日落ち込んだマイナンバーのパスワードのことを話したら、ちょっと気持ちが軽くなった。こういうじめじめしてしまいがちなことをカラッと話せるようになればもう少し楽しいのになあといつも思うが、なかなかできない。

 久保ミツロウさんと能町みね子さんが不定期で開催しているデトックス女子会が先月下旬にYouTubeチャンネルを開設し、週に2回水曜と土曜に配信をしている。初回の出だしこそ聴いたものの、その後聴けていなかったので、最新回まで聴く。すごいよ能町さん、えらいよ久保さんみたいな言葉が直接的でないにしろ、会話のラリーから伝わってきて、いいなあと穏やかな気持ちになる。どの回も面白いのだけど、特に第2回の久保さんの話が印象的だった。昔よく聴いた音楽を聴き直したときに泣いてしまった原因を紐解いたときの話。そのうちの感情の一つについて。

 久保「不安な気持ちになったときに、やっぱり私は昔から、そういうのに友達を巻き込みたくないっていう概念があるから。そう、今暇だな、とか今不安だな、っていう気持ちで、友達に電話するとか、会おうとかいうのは、昔からその友達が大事に思えば思うほど、絶対に嫌だったわけね。巻き込みたくないっていうのがあって。で、今いる友達に別にそういう寂しい思いされてるわけじゃないから、その友達のせいにもしたくないから。あの、友達に何かしてもらいたいわけでもないし、今からその、能町さんにそういう相手になってほしい関係性になりたいわけでもないっていう、そういうのがあって。自分はもうこういう不安な気持ちを、絶対に人にぶつけないっていう性格なんだっていうのに改めて、こう浮き彫りになってうわあああって、っていうのになって。」

2020年4月25日配信『俺たちデトックス女子会会議室 第2回』より)

 K野さんからセルフ置き配で貸してもらったシバタヒカリ『だから私はメイクする』を読む。以前、TBSラジオ『アフター6ジャンクション』で原作が紹介されていた本だったように思う。登場人物それぞれの髪型の毛先のしっとりとした描き方が上手で惚れ惚れする。それとアイラインの下にトーンを使っていて、顔立ちの陰影を細かく調整されておられて、途中ストーリーよりもトーンの技法に集中してしまう。

 エピソードの中に、職場で主人公と同じくメイクを大事にしておられる方と意気投合する話があって、その登場人物が自身のスタンスというかそういったものを表明するときに「ゲイですオネエじゃないっすよ」と言っていて、もやもやする。こういうことにいちいち引っかかってしまう。ほかの作品でも似たような気持ちになったことがあった。『パンダ探偵社』が好きで、短編集を購入した澤江ポンプ『近所の最果て』の中にも、作者の注書きの部分に「余談ですが私の妹はLGBTです」という言葉を見かけて、乱暴だなともやもやしてしまったのを思い出す。自粛警察という言葉や私刑という言葉がSNSでは溢れているが、他者の理解や歩み寄りに対してそれが最新の水準まで及んでいないときに寛容になれないのもなんか嫌だなあとまた自己嫌悪に陥る。寝る。