【雑記】いつかの受験体験記のようなもの

感謝していること

 こんにちは。○○大学○○学部の○○○○です。○○大に合格した後に、(予備校)の○○副館長からこの原稿依頼を受けました。僕はこの(受験生向け冊子)を読むのが好きで、大山での勉強合宿にわざわざ持参したり、センター直前期にはロッカーに常備するくらい現役生のときに愛読していました。そういうわけで、この依頼を受けたときに「とうとう自分がこれを書くんだなあ」と感慨深いものがありました。受験体験記を書いた結果、載せられない量になってしまったので、今回は(予備校)第1期生として僕自身がこの1年を通して感謝していることを書こうと思います。勉強に関するアドバイスはほかの(予備校)の方や(出身高校)の卒業生の方が書いていることを願います。

 受験期を通して感謝しているのは、やはりなんといっても家族の存在です。中でも祖母の心配りと父の陰ながらのサポートがすごく嬉しかったです。祖母は僕の帰りが遅いと心配して、無事に帰ってくるようにと仏壇に線香を上げていることがあります。帰ってきたときに玄関でその線香の香りをかぐと、心配をかけてしまったなという気持ちと同時に、なんだか温かい気持ちになります。また、僕が帰ってくるまでに父は梨を剥き、それをタッパーに整列させて入れたものを食卓の隅においてくれていました。それを僕に何ということなくさりげなくしてくれます。晩ごはんを食べた後に梨を食べるのがつかの間の楽しみでした。祖母と父だけでなく、家族のみんなのこういうさりげない心配りのおかげで、よりよい環境で過ごすことができたし、普段の勉強でも決して投げ出すものかと強く思うことが出来ました。

 また、友達の存在もなくてはならないものでした。(予備校)の教室は文理共通だったので、現役のときよりも理系の人と過ごせる時間が多かったです。授業においても国数英はほとんど同じ教室で学ぶことができました。その中でも理系の人たちが数学を難なくスイスイ解いていく姿に感化され、文系にありがちな苦手意識が緩和しました。あれを見たら自分の現状に落ち込むのではなくて、むしろ少しでも差を縮めたいと思わされました。このように(予備校)は自分はまだまだで、むしろもっとやらなくては、という気持ちを絶えず感じられる環境でした。他にも(予備校)で初めて知り合った友達の中に、前のめりにがんばる人がいました。周りの人をサポートしようとするその人の雰囲気が周りに伝播して、授業で取り扱った分かりきれなかった問題を放課後にカーペットの自習室でもう少し考えてみたり、それぞれの苦手な教科をその教科が得意な人に尋ねたり、授業の合間に問題を出し合ったりするなど、少しでも周りを巻き込み、曖昧な部分をつきつめていこう、一人ではなく周りと向上していこうという相互の働きかけが強まっていきました。

 そんな中、途中イレギュラーなことに見舞われてしまった友達もいました。しかし、その友達は(出身高校)健児ならぬ(予備校)健児というべき人でした。その友達の持つ不屈の精神は僕をはじめ、(予備校)の多くの人に受験という出来事に残された時間がいかに尊いかを再確認させる契機になったと思います。僕は彼がいてくれたからこそ、この1年をがんばれたのだと胸を張っていえます。以上のように、(予備校)では少しでも周りのためになるようにという行動が意識的にも無意識的にも数多くありました。自分が誰かのために何かできることはないかと考え、行動する利他の精神は巡り巡って自分に返ってくる(かもしれない)ので、利己的な追求に捕われすぎず、周りの人への献身的な贈与を試みるというのは、受験生に限らず誰にとっても大切なことです。このことは、そもそも(予備校)が多くの方の献身的な努力によって誕生したことと通じる部分があると思います。利他のパワーは事後的にぼんやり分かることだと思うのでまずは行動あるのみです。

 家族、友達だけでなくお世話になった方がほかにも数多くいらっしゃいます。(予備校)での1年間で、(出身高校)OBで元ブルガリア大使の○○さん、○○前教育長をはじめたくさんの方に来ていただきお話をしていただくという貴重な体験をさせていただきました。また、(出身高校)生とともにOB講演会や著者講演会、さらには球技大会にも参加できたことは嬉しかったです。図書館も○○前校長の尽力のおかげで使用させてもらい、多くの(予備校)生がよく利用させてもらいました。図書館の○○先生には本のリクエストを頻繁にしたにも関わらず、迅速に対応してくださいました。僕が秋から参加していた○○ラジオ体操会のみなさんにはいつも応援してもらいました。昨年の3月末に(予備校)の看板掛けを一緒にさせていただいた○○理事長は(予備校)生をいつも元気づけてくれる女神のような存在でした。○○副館長は朝登校したときの笑顔と(予備校)の階段を上ったところの壁面ボードに書いてくださった連絡やメッセージで励ましてくれました。館長は模試後や定期的な面談で自己分析をする機会を、また普段のSHRで主体的に考えるヒントを与えてくれました。(予備校)という施設にもお世話になり、多くの(予備校)生が登下校のときに看板に一礼することを続けていました。ここに挙げたもの以外にも、周囲の方々の手厚いサポートのおかげでこの環境があるのだということを常常感じました。

 だらだらと自分が感謝していることに関して書きました。しかしながら、実際に感謝の言葉を言った人はそんなに多くないかもしれません。もともと僕は人に感謝の気持ちを伝えるのが上手ではありません。でも感謝の気持ちをもつということは、毎日の生活にだらけたり、傲慢になる自分を、浪人した当初の悔しい気持ちや謙虚な気持ちに立ち返らせてくれる大切なことでした。また、このような周りの人の献身的なサポートに気付くことは受験生に限らず、誰にとっても大切なことだと思います。

 モチベーションをあげるためにしていたこととして、たまに○○大の入学式の様子を動画サイトで見ていました。動画を見ながらずっと夢見ていた入学式が実際に目の前で挙行された入学式当日、式の途中でよく聞いていた校友歌が流れたときのことでした。2回に渡った受験経験のことが走馬灯のように浮かんで、突如として涙がぽろぽろこぼれてしまいました。周りの人は誰一人として泣いていなかったので(当然といえば当然ですね)ものすごく恥ずかしかったですが、このときに「ああ、1年多くかかっちゃったけどほんとに頑張ったんだなあ」と自分で自分をほめました。

 最後に、受験生として過ごす1年は苦しいものだと思います。特に、浪人生にとっての1年はなかなか思うように成績が形に現れなかったりして、気持ちばかりが焦りがちです。そんなときに限って、自分のことを他人ばかりと比較して気にしたりしてしまいます。しかし、本当に比較すべきは「他人」ではなく、「過去の自分」だと思います。どういうことを苦手としているのか、ということを徹底的に見つめてみてください。同時に学習面だけに限らず、生活面で自分の改善できるところを見直せるよい機会だと思います。ぜひ、みなさんが自己研鑽に励んでほしいと思います。少し遠くからではありますが、皆さんの挑戦と健闘を心から応援しています。