【雑記】がんじょ

 図書館で借りた本を3日延滞している。こういうときの私はずるくて、図書館が開館していない時間帯をあえて狙ってこっそり返却ポストに本を投函したりする。だけど最近は開館時間中にカウンターで一言謝って返すようにちょっとずつしている。珍しくないことだからなのか、その一言を受けて司書の方から穏やかな口調で「はーい」と言われると、余計に申し訳なくなる。

 こないだ映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』を観た。当作はもともとはフジ系列ニュース番組の特集として取り上げられ、その後ドキュメンタリー番組として放送されたもので、上映にあたり追加取材と再編集をさらに行ったものだ。劇中の随所に自分の家族を思い起こす瞬間があって、これからふとしたときに繰り返し観たいと思う作品だった。劇中、散歩のときにひと目を避ける文子さんと自分の祖母の姿が重なった。

 最近、祖母は実家での手持ち無沙汰を解消しようと散歩をしている。そのルートは集落をぐるっと周るというもので、その道中に祖父の墓を訪れ墓掃除をしているらしい。祖母としては、墓掃除はあくまで身の回りの季節の移り変わりを楽しんだりするのと同じく散歩の中の一つの目的に過ぎないのにも関わらず、集落のご近所に道すがら出くわし世間話をすると、あたかも墓掃除が散歩の主たる目的であるかのように思いを勝手に汲み取られ、わざわざ祖父の墓掃除へ行くなんてえらい、がんじょ(地元の方言で元気という意味)だというような言葉をかけられるそうで、それがうんざりすると言っていた。だから祖母は集落の人たちが仕事や農作業に出払った午後2時くらいに散歩へ行くという話をしていた。人間くさい祖母の行動に思わず笑ってしまった。今思えば動機こそ違えど、先の自分の図書館の行動とどこか似ているところがあっておかしい。この散歩の話は年明けに帰省したときに、祖母の好物である干し芋をおやつにお茶を飲みながら話した。映画の中では、ヘルパーさんが文子さんをぎゅっと抱きしめる大好きなシーンがある。私も本当はこういうなんてことない話をするときや実家を後にするとき、祖母のことをぎゅっと抱きしめたくなる。でもまだ多分に照れるのでできない。今週末帰省したら祖母と祖母の老眼鏡を選びに一緒に出かける予定だ。