【雑記】正直さと手帳

・「正直」な手帳

 自意識過剰でプライドが変に高い自分が苦手だ。何か決意せんと去年使っていたほぼ日手帳の元日のページには書き初めを貼り付けた。ほぼ日手帳にはHP上にダウンロードページがあり、その中には書き初めシートもある。昨年末ふと思い立ってそのシートを近所のローソンでプリントアウトし、去年使っていた手帳の1月1日のページに「正直」と書いた。手帳にそのまま書くのではなく、紙を貼り付けたこともあってか、何気なく手帳を開くとその元日のページが真っ先に開く。正直に日々を過ごすことを目標にしたものの、そのあまりにも堂々とした「正直」にたじろいだ。

 

・年末年始の帰省

 年末年始に実家に帰省した。のんびりとした帰省だったし、家族のことは好きだし、親戚もほどよく好きだけど、実家のある地域社会のために何かできるかというとそれは違う。大晦日の日、日付が変わる前後に自分の集落の神社へお参りをすることが集落の慣習になっている。そこでは父をはじめ名ばかりの青年会が毎年神社の横にテントを設けぜんざいを振る舞う。神社へ足を運べば、そこでぜんざいを食べたり、おつまみを食べたり、ジュースや日本酒を飲んだりできる。小・中学性の頃は同じ集落の友達とその神社へ行き、ぜんざいを食べたものだ。そのあと隣の集落の友達の家へ遊びに行き、おもしろ荘を見て、その後のお笑い番組を見て、64やゲームキューブで遊び、朝になればそのおうちのおばあちゃんが作ってくれるお雑煮を食べて帰るというのをよくやっていた。懐古的な心持ちになったのもつかの間、現実はテレビの前、サザンの桑田さんがユーミンとノリノリで歌っている。神社脇のテントへ行けば、集落の人たちに何か近況を聞かれたときにひどくうろたえてしまうだろうし、そういう気持ちになりたくないので、神社へのお参りは高校生になったあたりからずっと行っていない。紅白も終盤に差し掛かり、寝巻きに上着を羽織った母から参拝に行かないかと尋ねられる。大人になりなさいと参拝を勧められ、まだまだ子どもだなと私の自尊心をくすぐろうと捨て台詞まで置いていく。その気持ちもわかるけど、どうにもその時間が近くと身体がこわばる。結局紅白を見終えたらとりあえずすぐ寝床に逃げ込んでばかりいる。今年も「2355-0655としこしをご一緒にスペシャル2018-2019」でたなくじの写真を撮ったあとはすぐさま布団に潜り込んだ。このタイミングで寝るのは参拝を拒む意味はもちろん、神社で毎年準備してくれる父への申し訳なさからくる寝てたという言い訳作りだ。地元のためになることを仕事にし、ゆくゆくはもっと実家の近くで働きたい。必要とあらば、おせっかいにでもすぐに駆けつけられるような場所で暮らしたい。ただ、自分が暮らす地域社会のために、直接なにかできるかと言われればそれは違って。そこのねじれがずっと解消できないままでいる。

 

・「ある種の夫婦」エーリヒ・ケストナー

ある種の夫婦 エーリヒ・ケストナー

 

歩くにも すわるにも 寝るにも

彼らは ふたりづれ

語りつくし 黙りとおして

そこまで 来た

 

年ごとに 髪は うすらぎ

肌は 黄ばむ

おたがいが 自分以上に

相手を 知っている 場合は 理解しやすい

 

ひとは 無言で語り 言葉で沈黙する

口は から回りする

沈黙は 十九種類からできている

(それ以上でないとすれば)

 

おたがいのこころと ネクタイを 見て

彼らは 腹を立てた

彼らは 三枚のレコードをかけた

蓄音機のように

 

だますとき いくたび

まともに 顔を ながめ合っただろう

自分のこころは なんとか だませよう

相手のこころは だませない

 

いくじなく生きて 見すぼらしくなった

今は 生地そのもの

たがいに おどろくほど 似かよっている

それは 当然だ

 

柵中の動物のように 彼らは にぶくなった

いちども 彼らは 逃げなかった

そして ときおり 第三者が檻の前に立つ

それは彼らを怒らせる

 

夜は 囚人となって ベッドによこたわる

そして かすかに うめく

そのあいだに彼らの夢が ベッドとクッションで

鎖と 棺をつくる

 

歩くにも すわるにも 寝るにも

彼らは ふたりづれ

語りつくし 黙りとおした

いまは・・・時だ

  お付き合いしている人といさかいをした。クリスマス前くらいからまともに連絡をとっていない。12月中旬にNHKラジオ「すっぴん!」で聴いたこの詩をふいに思い出す。ハナレグミの「眠りの森」もふいに聴きたくなる。こういうところでも自分のプライドが邪魔をする。

 

・大学の友人との久しぶりの通話

 大学の友人と久しぶりに話した。3時間くらい。祖母の部屋で電話をする彼の電話口からは、30分ごとに壁掛け時計のぼーんぼーんという音が鳴っていた。その度に謝る彼が面白かった。最後の方はずっと助平な話をしていた。思えば彼とはとりとめもない助平な話でずっと盛り上がってきた。大学を卒業する前、その彼と仲良しの友達とで卒業のお祝いをしてもらった。都合で参加できなかった「ファーストクラス会」の友人とはテレビ電話で乾杯した。そのとき彼からもらった緑色のマグは今でも大事に使っていて、ほとんど毎日職場に持って行っている。ちなみに今日はルピシアでこないだ買ったミント甜茶を淹れた。僕は二度受験をしたので彼とは学年が一つ上の同い年。大学生活に浮足立っていた大学一年の6月に知り合ったその友人とは、大学の食堂で初めて会って話した。そのとき何を話したのかはもうおぼろげになってしまっているけど、楽しかったしこれからの大学生活にわくわくしたことは覚えている。我が家にはテレビがなく、それからその友達の家にドラマ「ファーストクラス」を見せてもらいにしばしば遊びに行った。自転車に乗り、行きのコープでお酒を買ったり、アイスを買ったりしたのはよく覚えている。ファーストクラスの後に彼が好きな番組「ザ少年倶楽部」をよく見た。ほかにも彼の隣人の話をしたり、好きな漫画を教えてもらったりした。録画一覧にあった「ハートネットTV」のこともなんとなく覚えている。当時つけていた手帳はまだ引っ越し以来手をつけていない段ボールの中にあるだろうか。