【雑記】石油ストーブのにおい

 夕方に外へ出ると家の前の通りのどこかから石油ストーブのにおいがする。このにおいをかぐと冬の訪れを感じると同時に、実家のかつての光景が目前の景色に混じる。

 石油ストーブの上でさつまいもをアルミホイルに巻いて焼く祖父母、封筒に入れた銀杏を電子レンジで加熱し、レンジの前であったまるのを今か今かと待つ祖父、ストーブでしゃぶしゃぶ用の餅を焼く祖父母、兄たちが寝床にするせいで向きや各辺の布団のバランスがいびつになっているこたつ、墓の横に植えてある栗の皮を剥く祖父母、まめに灯油の給油をしてくれる父、ご飯を食べて皿洗いを済まし、こたつに入って横になったかと思えばすぐに寝てしまう母、市報や広告、新聞を丁寧に読む祖父母、食後の食卓にて温かいお茶をお茶碗に淹れ入れ歯を洗う祖父、それを煙たがりぶつぶつ言いながらその場からそそくさと離れる父、注意しながらも食卓に一緒にいる祖母。

 中には年中見かける光景もあるし、中にはもうそんな元気が無くなってしなくなってしまった光景もある。でも、こうしてにおいを介してなくなってしまったかつてあったことをたしかに思い出せるということはなんと貴重なことだろうと思う。祖父母の健康を心から祈る。